とうとう、出産の朝が来ました。

前日はわりとよく眠れたような気がします。手術は午後1時から。
朝から何も飲んでないので、喉がからから。午前中は手術のための準備です。
これはもう以前に経験済みなので、要領はわかっていましたが、面倒。
浣腸、点滴、採血、剃毛、導尿。

そしていよいよ時間です。脊椎の麻酔はやっぱり痛い。
手術台の上でも、赤ちゃんは元気に動いています。
胎動ももう最後。がんばりましょうね、と助産婦さんが微笑みます。
麻酔が効いて、よろしくお願いします、と、手術が始まりました。

意識はあります。
まだかな、まだかな。…ん?なんだかおなかが押されているぞ。
「今、赤ちゃんが出てくるのお手伝いしてますからねー。」
どうやら先生と助産婦さんがぐいぐいとおなかを押しているようなのです。
帝王切開って、そんなことするんだ?知らんかったー。
そして、「ふぎゃあああ~」という声が。

赤ちゃんだ!!先生が近くに赤ちゃんを連れてきてくれました。

「おめでとうございます。元気ですよ。」

このときのこと、きっと一生忘れません。
あんただったんやねー、いっつもおなか蹴っていたのはー…。
涙をこらえるのに必至で、言葉が出ませんでした。
それから、手術の間、ずーっと、助手の看護婦さんが手を握っていてくれました。
とても、心強かったのを覚えています。

部屋に戻り、彼と二人で名前を決めました。
彼の名前から一文字とって。
その日はもちろん動けず、父にデジカメで赤ちゃんの写真を撮ってもらって、
それを眺めていました。

出産後一日目。

今日まで点滴で、ベッドを降りられません。
ああ、赤ちゃんに会いたいなあ、どうしてるかなあ…。
早く立てるようになりたくて、ベッドの中で足を動かす運動をしてました。
寝返りも、がんばってしました。おなかはやっぱり痛い…。
傷はホッチキスみたいなのでとめてあります。引きつる感じ。
それに、子宮が収縮する痛みもあります。生理痛の最強版みたいな。
でも、陣痛に比べたら楽なんだろうなー。
看護婦さんが、赤ちゃんを少しの間だけ連れてきてくれました。かわいい。
でもまだ抱っこできない。おっぱいも飲ませられない。
病院からもらった術後のスケジュール表を何度も見て、
抱っこできる日を待っていました。

出産後二日目。

ガスも出て、流動食が始まります。
最初は水のような重湯。でもおいしい。
導尿がやっととれて、体が動かしやすくなりました。
今日から自分で立ってトイレに行くのです。最初だけ看護婦さんの付き添いで。
でも一歩動くごとにおなかは痛いし、立ったり座ったりはもう激痛。
おまけにおかゆしか食べてないからフラフラです。
早く赤ちゃんを抱っこしなくちゃいけないんだから、と必至で運動してました。
一日2回は点滴です。腕はもう穴だらけ。

出産後三日目。

少しずつ動くのが楽になってきました。
やっと、少しの間だけ赤ちゃんを抱っこすることもできました。
食事も、少しずついろいろなものが食べられるようになってきて、とても楽しみ。
父は毎日来てくれました。1時間半もかけて。初孫がかわいいのでしょう。
私はたま○クラブの付録の「赤ちゃんのお世話ブック」や、
「母乳育児」の本を読んで、一所懸命勉強してました。
母が他界していたので、困ったときに頼れない。自分でがんばらなくちゃ。

この日の夕方から、私の体に劇的な変化が起こりました。
なーんかパジャマが冷たいな、と思ったら、おっぱいが出てきていたのです。
びっくり。あれあれ、と思っているうちに、おっぱいは膨れて、
岩のように固くなり、痛くなってきました。
さっきまでしていたブラジャーが、もう入りません。
夜になるにつれ、痛みはますます激しくなり、どうしようもなくなってきました。
看護婦さんに話すと、「冷やした方がいい」とのことで、
アイスノンを持ってきてくれたのですが、
がちがちの胸にがちがちのアイスノンを当てても痛いだけです。

「母乳育児」の本を読むと、痛いときはしぼれと書いてある。
でも、出産直後の母乳は「初乳」と言って、
大切な免疫がたくさん含まれているから、どうしても飲ませたい。
今しぼったら、初乳がなくなっちゃう。
と、勝手に思い込んでいて、でも、痛くてたまらなくて、
仕方なくしぼることにしました。夜中、赤ちゃんの写真を眺めながら、
岩のようなおっぱいを、半分泣きながらしぼる私。
こんなんで赤ちゃん育てられるんだろうか、と、とってもブルーな日でした。

出産後四日目。

今日から、赤ちゃんと同室になります。
午前中、おっぱいのあげ方の指導がありました。
ああ、私の赤ちゃん。これからずっと一緒にいられるね。
8人くらいのママたちと一緒に、赤ちゃんを抱っこして、
おっぱいを口に含ませます。私が待ちに待った瞬間です。
でもなかなかうまくいかない。たぶん全然飲んでない。
おーい、飲んでくれー。一生懸命口をあけるけど、爆睡中のようです。
それから、オムツの替え方の指導。
周りは、2人目なのか、結構慣れているママもいました。
げ、ウンチしてる。なのになんでこんな気持ちよさそうに寝てるんだろう。
うーん、きれいに拭くのって難しい…。

夜間はナースステーションに預けても良かったんだけど、
私は少しでも一緒にいたかった。
部屋に戻って、しばらくすると、赤ちゃんが泣き始めました。
ようし、今度こそ飲んでもらわなきゃ!
なんとか飲んでくれたようで、おっぱいをくわえたまま、
すやすやと眠ってしまいました。か、かわいい。かわいすぎる。
その日から、しばらくはもう夜も昼も関係なく、泣いては吸わせ、
抱っこしては眠り、を、1~2時間おきに繰り返していました。

この日から、ラウンジで他のママと一緒の食事になりました。
そのときだけは、赤ちゃんをナースステーションに預けて、ゆっくりできるひととき。
普通分娩の人はやっぱり痛そう…。円座のクッションが手放せないようでした。

出産後五日目。

初めておっぱいマッサージをしてもらいました。う、痛い!これは痛い。
でもやってもらわなきゃ。涙が出そうに痛いです。
出産って、ほんと痛いことだらけ。
でも、終わった後は少しおっぱいが軽くなりました。
「柔らかい方が、赤ちゃんも吸いやすいのよ」うん、少し飲みやすくなったみたい。
飲んでる飲んでる。かわいい~♪
この日、久しぶりにシャンプーをしました。美容師さんが洗ってくれるのです。
素敵なサービス。なんで人から頭洗ってもらうとこんなに気持ち良いんだろう…。

出産後六日目。

少しずつ、赤ちゃんのいる生活に慣れてきました。
今日も母乳マッサージをしてもらいましたが、痛くない!
昨日の助産婦さんとは別の人です。
わー、人によってこんなに違うんだ。
「うん、これならおっぱいだけで大丈夫ね」この一言が、
どれだけ自信につながったことでしょう。
あんまりうれしかったので、退院するときのアンケートに、
感謝の気持ちを書いたくらいです。

出産後七日目。

午前中、エステサービスがありました。
フットマッサージを受けながら、フェイスエステをしてもらうという、豪華版。
極楽、極楽。

それから、傷のホッチキスをとってもらいました。いわゆる抜糸です。
とるときはちくっとして痛いけど、動きがだいぶ楽になりました。
午後からは、赤ちゃんの沐浴指導。マンツーマンで教えてもらいます。
お湯に入れると、口を半開きにしたままだらーり。
「羊水の中を思い出すんですよ」
そうかあ~。納得。だからこんなに気持ちよさそうなんだ。

夕食は、お祝い膳で、フレンチのフルコースでした。
オードブル盛り合わせ。牛蒡のスープ。
イサキのグリルカレー風味のソース。和牛ヒレ肉のステーキ温野菜添え。
デザート。もちろんワインも。本当においしかった。
助産婦さんと、数人のママたちと一緒です。
話を聞いてみると、初産だったのは私だけで、
他のママはみんな、二人目、三人目。なんと五人目の人もいました。
本当に少子化なのだろうか。

出産後八日目。

いよいよ、退院の日です。
この日、初めてシャワーの許可がでました。ああすっきり。
会計を済ませ(意外に安かった)、お土産をいーっぱいもらって、
いざ、病院を出るときは、スタッフの方がお見送りをしてくれたのですが、
なんだか涙が出てきました。
だってとっても居心地良かったんだもん。

世間では、「ゴージャス個人病院なんて…」と、言う人もいるけど、
予想外に子宮筋腫とか中毒症などのアクシデントがあった私には、
助産院という選択肢を選ぶことはできませんでした。
それに、総合病院では、個室でゆっくりすることもできなかっただろうし。
くつろいでお産をするのには、個人病院、いい環境だったと思います。
先生、看護婦さんを始め、スタッフの人がほんとにみんな温かくて、
食事もすごくおいしかったし、とてもいい思い出ばかりです。

健診のとき、毎回撮ってもらったエコー写真は、一冊のアルバムに納めてあります。
そのアルバムを見ていると、毎回、少しずつ、
少しずつ大きくなっている赤ちゃんの様子が、
とてもよくわかります。そして出産後すぐの写真も。

こうして生まれた私の赤ちゃん。
妊娠中はいろいろあったけど、今のところ、元気に元気に育っています。