その年の九月、私は結婚したばかりでした。当時は派遣社員としてフルタイムで働いていて、結婚後も、1~2年は共働きをして、お金を貯めるつもりでした。 なにせ、夫の貯金は結婚式や新婚旅行、新生活準備、新車の購入などですっかり消えてしまい、私名義の貯金はもともと無くて(笑)。

それは、当時の職場の勤務体制の変更などがあったため、家事と両立できる仕事を探し、転職活動をしている真っ最中のことでした。

結婚して1ヵ月半たつのに、一度も生理が来ていない。
しかも最近ジーンズがきつい。おかしい。
ちょうど、転職希望先の二次試験の日でした。
面接は午後からだし、午前中、近くの産婦人科に行ってみよう…。
念のため、前の日に検査薬を買って調べました。
説明書を読むと、5分ほどで結果が出ると書いてある。
どきどきしながらトイレに入る。指示された通りにやってみると、
なんとかけた瞬間に陽性反応が!
えっ、5分かかるんじゃないの?反応早すぎでない?
ほんとに正しいんだろうか、コレ…。

そして次の日、半信半疑のまま、近くの産婦人科に行きました。
たまたま、評判のいいきれいな産婦人科が近くにあり、
知り合いがそこで出産していたこともあって、迷わず決めました。
いわゆる、ゴージャス個人病院です。受付はホテルのフロントのよう。
待合室はお洒落なカフェさながら。
院内に花屋さんやマタニティブティックまである。
しかも優しそうな女医さん登場!ああ良かった。
産婦人科は初めてだったので、それだけで安心。

女医さんは、尿検査の検査結果を見ながら、あっさりおっしゃいました。
「妊娠の反応が出ています。まず間違いないですね。」
あっ、そっ、そうなんだ。なんだか不思議な気分。
その後、内診で子宮外妊娠でないか確認し、エコーで胎のうを見て、
そして初めて、
「良かったですね。おめでとうございます。」と言われました。

病院の帰り、すかさずコンビニにより、たま○クラブを購入。
ああ、赤ちゃんができちゃった。
予定ではまだまだ先のはずだったんだけど…。
でも、いつかは欲しいと思っていたし。
何しろ彼はすぐにでも、って感じだったし。
予定日は6月30日かあ。そっかあ、そっかあ…。
そのとき彼は、研修で1週間ほど家を空けていました。
なんて報告しようかなあ。どきどき。喜んでくれるかなあ。

そして家に帰り着き、はっと気が付いたのです。
「あっ、今日二次試験の面接やん!」
どうしよう、電話して辞退しようかいな。失礼かな。うーん。
とりあえず採用されたら半年だけは働こうかな。
でもやっぱ迷惑だよな。どうしようかな。うーん。

と迷っているうちに、出かける時間になってしまいました。
まあ一応受けるだけは受けてみようと決め、面接会場に向かいました。
面接は4対1(だったと思う)。
半年前にも就職活動していて、面接は何度も受けていて、慣れていました。
緊張はしていなかったけど、私の頭の中では、
「どうせ働けないし」という考えがぐるぐる…。

女性の面接官は、そんな私にびしびしつっこんできました。
「仕事と家庭の両立は大丈夫ですか。」
「ご主人は仕事には賛成ですか。」
「ご主人が転勤になったらどうされるおつもりですか。」
…おいおい、既婚者が活躍している職場ですって、
あんたんとこのHPに書いてあったやん。
結婚していることがそんなに悪いんかい。
ご主人ご主人って、働くのは私だよ。

私はだんだん腹がたってきました。もういいや、こんな会社。
面接中にすっかりやる気をなくした私は、もちろん不採用。
半年前の転職活動で、結構簡単に内定をいくつかもらえていた私は、
結婚しているということが、いかに就職に不利かということを、痛感しました。
いいんだよ、私にはもっと大事な仕事ができたんだから!
再就職、きっぱりとあきらめました。

帰って、妊娠のことを主人に電話で伝えました。
「えっ、はっ、まじで?」
それからしばらくたっても、彼はなかなか実感が湧かないようで、
なんとか父親らしくなってきたのは、生まれて2ヶ月過ぎてからのことでした。